

しかし、この日本版ビッグバンこそは、日本の金融資産を外国に流出させる“売国奴的政策”に他ならない。戦前、日本が金解禁によって多くの金を流出させた愚を、また繰り返そうとしているのである。
そう、榊原英資、彼は戦前の大蔵大臣・井上準之助と全く等しいと言えるのである。
98年4月1日、日本版ビッグバンのフロントランナーともいうべき改正外為法が施行された。これによって、1200兆円といわれる個人金融資産をめぐり、内外の金融機関の競争は一段と激化する。
特に、外資系金融機関は積極的に攻勢をかけてきている。
98年2月13日、三井信託銀行とフランスの有力銀行ソシエテ・ジェネラルの業務提携を報じた読売新聞は、「日本版ビッグバン(金融制度の抜本改革)へ向け、1200兆円に上る日本の個人金融資産に狙いをつけた外国金融機関の動きが活発化しており、今後も内外金融機関の提携が加速しそうだ」と明記したが、今ではそれも一般的見解になっている。
日本の金融機関は、商品開発や運用面で欧米の金融機関に大きく水を開けられており、今後もこうした外資との提携が盛んに行われるだろう。しかし、「提携」と言えば聞こえはいいが、実質的には外資による日本の金融機関の「乗っ取り」に他ならない。
金融システムを水際で保護していた旧外為法の堤防が取り払われ、日本の金融機関が外資の荒波にさらされる――まさにこれが、改正外為法なのである。
榊原英資は、1941年3月27日神奈川県出身、64年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。65年大蔵省入省後ミシガン大学へ留学し、経済学博士号を取得。豊岡税務署長、国際通貨基金派遣職員などを経て、政界進出のため一時退職、埼玉大学助教授に就任。ハーバード大学客員教授を経て、81年大臣官房企画官としてカムバック。その後、大蔵省理財局総務課長、東海財務局長、官房審議官、国際金融局次長などを歴任。95年6月21日に国際金融局長に就任する。
国際金融局長就任直後の95年9月8日、日銀は公定歩合を0.5パーセントに設定。史上例のない、1パーセント未満の超低金利が実現する。
96年末より日本版ビッグバンが提唱されるが、榊原はその考案者であり、その旗頭となる。そして、外為法改正は97年1月16日の外為審答申を経て、4月24日衆議院、5月16日参議院を通過する。特措法改正が関心を集めていた直後の成立であった。
こうした実績により、97年7月15日、榊原英資は大蔵省財務官に昇格する。
今や榊原は、日本を代表するタフネゴシエーターとして位置づけられている。事実、榊原の発言には国益を求めるものが多く見受けられる。そのことは、98年のダボス会議を見ても明らかだろう。
しかし……
| 「グローバリゼーションのプロセスのなかでの改革は、決して『日本的』なるものを捨てることではなく、むしろ、オープンかつ透明な形で、グローバルなネットワークのなかで『日本的』なるもののアイデンティティーを確立していくことなのである。戦後のアメリカ化のなかで、失ってしまったナショナリティーを再興することなく、グローバルなネットワークのフル・メンバーになることは難しい。明治以降の西欧化あるいは戦後のアメリカ化はたしかに、日本的なもの、あるいは日本の歴史や文化を捨てていくプロセスでもあったが、グローバルなネットワークの重要な結節点になるためには、今後、自己のアイデンティティーを確立し、自己主張しながら相互に影響を与えていくことが重要になってくると思われる。」
(『新世紀への構造改革』榊原英資著)
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| 「世界経済に唯一無二のグローバル・スタンダードなど存在しない。税制一つとってもアメリカの所得中心のパターンと、大陸ヨーロッパの消費中心のパターンが共存している。現在、進展しているグローバル化とは、世界のネットワーク化であり、その結節点である各国は、独自のアイデンティティーや文化を持つ。『日本がグローバル・スタンダードという普遍的価値に合わせていくべきだ』という考えは間違っている。
もちろん、日本はグローバル化に対応しなければいけない。戦後日本は一種の情報鎖国をしていた。外国に永住する人は少なく、海外情報は極端に欠如していた。日本は今、情報開国をすべきで、その意味では、グローバル・スタンダードを唱える人と認識は一致している。 しかし、日本型経済システムで残すべき点は多い。例えば、雇用を重視する企業の姿勢だ。リストラをする時に雇用と賃金の選択があったら、賃金カットを選ぶのが日本型のリストラだ。これは、今後とも守るべきだ。雇用を大切にすることで、社会の信頼関係が形成されており、それを崩せば日本社会は崩壊する。」 (読売新聞98年1月22日朝刊)
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ここでは、「日本的なるもの」を維持しつつ、グローバル化を推し進めようという姿勢が説かれている。つまり、国益を求めつつグローバリゼーションに対応していこうとしているように見える。
具体的には、どのようにグローバリゼーションを推し進めていくのだろうか。
| 「榊原 まさに、おっしゃるようにアジアは通貨危機で、日本は金融システムの危機ですね。ところで、私も外為法改正とか金融ビッグバンとかを推進する立場ですが、金融ビッグバンについては大きな誤解があると思うんですよ。
というのは、基本的に金融機関は倒産させてはいけないんです。これは世界的な常識ですよね。イギリスの金融ビッグバンのときも、マーチャント・バンクは倒産ではなく、吸収合併されていますよ。不正行為で非常な非難を受けたベアリングズでも、つぶれてはいない。オランダの保険会社が買収したわけで、おそらくバンク・オブ・イングランドとかイギリスの大蔵省が裏で調整しているんですね。……(中略)…… では、金融ビッグバンというのは何かといえば、マネジメントは変わらなきゃいけない。競争は激しくしなきゃいけない。吸収・合併はなきゃいけない、当然のことながら。」
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| 「榊原 まず、金融ビッグバンの目的が資産運用の効率化だということは、全く異議はありません。資産運用の効率化のために、特に資産運用面での競争を激しくするということだから。ただ、もう一度言わせていただければ、そのためには例えば吸収合併みたいなものが非常に望ましい。山一証券がつぶれないでメリルリンチと吸収合併していれば、一番望ましい姿だったんです。ビッグバンで私は、そういうことを想定していた。例えばメリルリンチが入ってきて山一の株の半分を持つ、あるいは60%を持つ。
――そして、国内で効率的な活動をする。 榊原 そう、効率的な展開をする。それが、ビッグバンだろうと。つぶすことがビッグバンではないということです。」 (『よみがえれ日本経済――This is 読売 3月臨時増刊』)
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| 「榊原 ……ただ、(金融機関が)生き残っても中身は多様です。欧米の金融機関を見れば、スイス、フランス、ドイツの大陸ヨーロッパを含めて、マネジメントのかなりの部分がイギリス人でありアメリカ人ということになってしまっている。人材が国際化、多様化してきたわけですが、金融機関というのはある意味では情報産業、あるいは優れた人材をいかに持っているかが勝負の機関だから、インターナショナルになるのは当然なんです。」
(『よみがえれ日本経済――This is 読売 3月臨時増刊』)
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| 「国際的業務を行う金融機関のなかで経営中枢が自国人だけというのは例外である。理由は極めて明快である。金融業はかなりの部分情報業であり、情報獲得のために最も必要なインフラは人脈である。国際的人脈を広く形成することなく、国際情報、特に一次情報を手に入れることは難しい。とすれば、国際金融業務にとって国際人脈の組織は重要な経営戦略の一つであり、そのためには、経営の中枢にかなりの数の外国人がいることが有益、いや必須である。」
(『新世紀への構造改革』榊原英資著)
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| 「問題は、日本の金融機関が、情報と人間の移動を弾力的にするような組織変更を行えるかどうかであるが、競争が極めて激しくなり、市場の圧力が増せば、好むと好まざるとにかかわらず、生きのびるためには、こうしたポリシーをとらざるをえなくなろう。とれないところは、競争から落ちこぼれていくだけである。こうしたプロセスが進んでいくなかでの一つのポイントは、外国金融機関との合併・業務提携あるいは外国人取締役の採用等であろう。当然のことながら、グローバリゼーションは企業そのものが、その構成員を含めてグローバルになっていくことを求める。外国人株主、外国人役員あるいは外国人スタッフはグローバル企業の必要不可欠の属性であり、これなしには、企業はいくら巨大であろうと、ローカルな組織にならざるをえない。」
(『1998年外為自由化とビッグバン』の榊原英資の序より)
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イギリスの金融市場そのものは活気を取り戻し、世界の金融センターとして復活したが、その土俵で元気なのは外国企業ばかり。イギリスの伝統的な金融機関は壊滅した。つまり、イギリスの金融市場は、外国勢に乗っ取られたのである。
自国のイギリス勢が「ホームグラウンド」で活躍できなくなり、外国勢ばかりが活躍するこの状況が、テニスのウィンブルドン大会に似ていることから、ビッグバン以降のイギリス金融界の有り様は「ウィンブルドン現象」と呼ばれている。
実際、金融・証券界では、「デリバティブではとても英米系銀行にかなわない」「メリルリンチ、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス、それに野村が、日本の新四大証券になる」といった声が聞こえているのである。
つまり、スケールが全然違うのである。よって、その乗っ取りの規模も、イギリスの場合とは比較にならないほど大きいということが言える。
自主廃業を決めた山一証券の30の支店、約2000人の即戦力社員は、メリルリンチに引き継がれた。これはまさに、山一証券のおいしいところだけを取った、メリルリンチの乗っ取りということができる。山一証券系列の山一投資顧問を買収したのは、フランスの大手金融機関であるソシエテ・ジェネラル。
日本債権信用銀行と米大手進行バンカース・トラスト、日本長期信用銀行とスイス銀行の提携、米大手ノンバンクのGEキャピタルの傘下に入った東邦生命など、その勢いはとどまるところを知らない。
つまり、外資系金融機関の日本乗っ取りではなく、正確には「ユダヤ資本の日本乗っ取り」というべきなのである。
榊原による国益を求める発言、ダボス会議等での日本弁護――これらは一見評価できるように見える。しかし、ユダヤ資本の乗っ取りを公認する日本版ビッグバンの実態を考えると、そうした榊原発言も出来レースに思えてくるのである。
『フォーブズ』誌の記事の冒頭には、「ビッグバンが成功すれば、レーガンが現在の力強い米国経済の下地を築いたのと同様に、日本経済を不況から救うことができるかもしれない」と書かれているそうだが、それに対しトッテン氏は疑問を呈し、ニューヨーク在住のエコノミストであるマイケル・ハドソン氏と、この記事に対する批評を試みている。
なお、トッテン氏のページには「No.153 ビッグバンに関する読者からの質問とハドソンの回答」として、「No.143 ビッグバンが日本へもたらす影響」の補足説明も存在する。
以下は、ビル・トッテン氏のページからの抜粋である(下線強調等は引用者による)。
トッテン:最悪の影響は、日本企業が使える資金が不足するということではないだろうか。 ハドソン:資金不足だけではない。日本の銀行やその他の金融機関には当座の支払い用の流動資金が不足し、流動性危機が生じる。金融機関は債権を回収しなければならなくなり、それによって民間銀行の顧客は業務に支障をきたすことにもなりうる。 トッテン:「グローバルな管理」とは、将来のために日本人がためてきた資金が日本経済から海外に流出し、それによって日本人の将来の幸福が奪われることを意味するのであろうか。 ハドソン:その通りである。貯蓄が日本国外へ流出するにつれて、円のドルに対する価値が下がる。資本が国外へ流出すれば日銀は財務省証券を売却するであろう。その結果、日本は財務省証券から米国の株式市場へシフトするであろうが、米国企業の持ち株比率を過半数にすることはできず、支配権なしの所有となるであろう。 1月1日、韓国の国民は「自国の」為替危機を緩和するために、金を放出するよう要求された。この「自国の」という言い方はまるで韓国が招いた為替危機であるかのようだが、実際には、不動産や株式市場を高騰させるためにドルを軽率に韓国の銀行に貸し付けた米国の銀行が招いた危機なのである。アジアにおける新しい経済改革の目的は、アジアの金融市場ではなく、米国の金融制度を流動化させ、保護することにある。そしてこのプロセスにおいてアジア市場は崩壊するであろう。 ただし、日本の株式仲介業者の中には、米国の提携相手に合弁株を売り、儲けるところも出るであろう。そしてその合弁会社は日本から貯蓄を絞り取り、それを米国やヨーロッパへ流そうと大々的にキャンペーンを行う。最終的にそれが米国やヨーロッパでバブルを引き起こし、はじけた時に日本の投資家はすべての資金を失い、日本は再起不能になるであろう。
外国資本が株や不動産を買うために東京に集中するのは、円の対ドル為替相場が安定あるいは上昇する時だけである。日本の不動産価格や日経平均株価が上昇していたとしても、円相場が下がれば、外国投資家のドル建ての投資価値は目減りするかもしれない。ビッグバンの影響によって、日本の貯蓄が円から米ドルや他の外貨へ流れるのを外国投資家や投機家が目にすれば、自分達が持っている円を売る可能性が高くなる。 さらに将来の証券価格や外国為替相場を予測することで取引を行うデリバティブ(金融派生商品)と呼ばれる金融商品もある。デリバティブには直接投資は介在しない。純粋に金融投機であり、その金融手法に対してノーベル賞が授与されている。 これは新しい種類の空洞化である。今回は製造業ではなく、不動産市場や不動産業界および日本の貯蓄の空洞化である。この空洞化は、負債の担保である不動産の価値が負債額を下回る状況を指す。不動産の所有者が受け取る賃貸料よりも高い利子が、その担保に対する負債として付加されていく。 銀行や他の金融機関は預金者の預金を預かるものの、貯蓄者が預金をおろし始めた場合にその預金高をすべてカバーできるだけの資産を持っていない。真っ先に貯金をおろし始めるのは大手の海外預金者であろう。銀行は預金の引き落としを可能にするために、保有株式を売却し、これによって日経平均株価が下がり、保有株の価値はさらに下がる。銀行が自己資産で預金をカバーできないことから預金者は不安になり、預金の引き出しにさらに拍車がかかる。それによって銀行はさらに株や不動産、資産を売却せざるを得ないという悪循環が起きる。しかし、この悪循環で海外の投機家は何百ドルもの利益を上げることになるのである。 トッテン:日本には1,200兆円の個人貯蓄があると言われている。『ニューズウィーク』誌(97/9/22)によれば、これは連邦金塊貯蔵所に蓄えられている金額の200倍以上だという。これだけの貯蓄があれば、海外からの資本を引き付ける必要などないのではないか。 ハドソン:日本の貯蓄は主に不動産ローンや普通株などの資産に注ぎ込まれ、その資産価値は金融制度全体の預金者に対する負債額よりも下回っている。すべての貯蓄が金融機関で現金化されれば、自社の運用資産を売却しなければならなくなる。これで不動産および株価が暴落し、貯蓄額の4分の1しか現金化できないであろう。またこの現金化により、不動産と株式の正味資産が一様に減少する。したがって、貯蓄は帳簿上の貯蓄でしかない。海外からの資本の流入により日本が株式市場や不動産市場を競り上げたいのであれば、それは起こり得ない。 トッテン:4分の1しか現金化できないということは、金融機関あるいはそれを規制している大蔵省が残りの4分の3を盗んでしまったということか。 ハドソン:突き詰めると、貯蓄を支える資産価値が下がることで日本の貯蓄が一瞬のうちに消えてしまうという経済の仕組みを大蔵省が理解していないことが原因である。大蔵省は「通貨」が「負債」で支えられている資産を意味することや、債権と債務が相互に絡み合っているのが経済であることを理解していない。大蔵省は世界をあまりにも簡素化して捉えている。工場や事務所への直接投資と、不動産価格や企業の株式を競り上げるための貯蓄の投機的な利用とをまるで同じであるかのように考えている。彼らは、「投資は投資だ」と考えているのであろう。 トッテン:多くの日本人がマイホームを持てないのは地価が高すぎるためである。金融機関を破産させても地価を下落させれば、地価が自然なレベルまで下がり、株価も日本国民が購入できるレベルまで下がるのではないか。そして、外国投資家に買いたたかれるよりは、日本国民に土地や株を購入させる方がましなのではないか。 ハドソン:政府や金融機関の失態により、国民や企業の貯蓄が大手不動産開発会社に融資されたり、将来性のない株式の購入に回されたりしたため、その貯蓄はもはや戻ってこないということを、大蔵省は日本国民に知らせようとはしないであろう。 結局、大蔵省は米国の言うことをそのまま行動に移しているに過ぎない。米国が望むことは、日本経済を良くすることではなく米国人の利益を最大限に増やすことなのである。 日本の金融制度の管理が失敗したことを事実として受け入れなければならない。最も良いのは、日本がその損失を今すべて清算してしまうことである。銀行が不良債権から抜け出せるよう公的資金を投じてもうまくはいかない。日本の銀行はその低金利資金を国内経済の立て直しよりも、外国為替の投機のための融資に回しているからである。 トッテン:ではビッグバンによって海外からの資金が流入するのではなく、日本は1,200兆円を失うことになるのか。 ハドソン:その通りである。 |
よく「個人金融資産1200兆円」といわれているが、97年度の個人金融資産は1223兆円、そのうち預貯金が695兆円とその56.8パーセントを占める。この預貯金の割合は、アメリカの14.1パーセント比べると格段に高く、これが外資に“ビジネスチャンス”と言わせる要因になっているのである。
まず、注意しなければならないのは、この個人金融資産1200兆円の動向というのは、一般庶民とは無関係であるということである。というのは、この個人金融資産1200兆円のほとんどが、一部の巨大資産家によって占められているからである。「個人金融資産1200兆円が狙われている」といっても、実は、外資系金融機関が狙っているのは、この一部の巨大資産家の財産なのである。
こうした一部の巨大資産家が、自らの資産を海外に移す傾向はすでに表れている。
98年4月2日、電通は首都圏在住の世帯年収(共稼ぎを含む)1500万円以上の男性を対象にした「金融機関・金融商品に対する意識調査」で、「為替リスクがあっても海外投資をしたい」という人が4割以上に達すると発表した。また、海外投資の傾向は、改正外為法施行後に増加していることが確認されている。事実、日本の超低金利を嫌って、金利が高い海外の銀行に預金をする人が増え始めているのである。
もちろん、年収1500万円ではとても“巨大資産家”とはいえない。しかし、財産が増せば増すほど、この運用面の魅力が増すということは容易に想像されることである。おまけに、改正外為法によって資金移動の国境が取り払われ、そこにはタックス・ヘブンへの道が開かれているのである。
巨大資産家たちが、海外のタックス・ヘブンを求めて巨額の資産を海外に持ち出すということは、十分に考えられる。そのとき、日本の個人金融資産1200兆円は、いったいどうなるのであろうか。
そして、海外に多額の資産が流出してしまったならば、日本の税収が減少し、日本の財政が悪化することは容易に考えつくことである。これはまさに“国難”と言わざるを得ない。改正外為法によって、日本の金融危機が増幅されるのである。
かといって、今日本が公定歩合を引き上げることは、ほとんど不可能である。
公定歩合を引き上げれば、企業は銀行から資金を借りにくくなり、その資金繰りがますます悪化する。となれば、中小企業どころか一流大企業ですら倒産しかねない。倒産、失業者、不況といった状況が明らかな公定歩合引き上げなど、まず不可能であると言える。
つまり、今の日本は0.5パーセントの公定歩合に縛り付けられており、その超低金利によって、個人金融資産が海外に流出せざるを得ない状況がつくられているのである。
現在、全国の銀行146行が自己査定に基づいて算出した「問題債権」の総額は、76兆7080億円に上る。しかし、これは飽くまでも「自己査定」であって、実際の不良債権は100兆円以上になるといわれている。
そこに、98年4月から早期是正措置の波がやってくる。
早期是正措置とは、金融機関が経営の健全性を示す自己資本比率を計算、公表し、金融監督庁が、自己資本比率が基準より低い金融機関に対し業務停止などを命令するものである。これは、BIS(国際決済銀行)が課している監督基準規制を、日本国内に応用したものと言える。
この結果、銀行の「貸し渋り」の問題が深刻化し、資金を借りられないために設備投資を見送ったり、倒産する企業が続出しているのが現状である。
アメリカの経済アナリストの中には、「もっと円が強く、日本経済の状態がよいときに金融ビッグバンを行えば、スムーズにことが運んだだろう」という声がある。
そこには次のように書かれていた。
| 「大国巨大企業の日本国内参入が自由となり、参入外国企業による良いところだけのつまみ食いで、日本国内市場は荒らされ日本企業が圧倒される。よほどのことがないかぎり、日本企業は勝てないと思われる。」
(夕刊フジ98年2月21日「ビッグバンに異を唱える『梶山ペーパー』」)
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最悪の時期に施行された日本版ビッグバン。かつ、イギリスより大がかりな改革を、アメリカより短期間で成し遂げようとする日本版ビッグバン。その結果はおのずと知れようというものである。
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まさに至言であろう。
今まで見てきたように、商品開発や運用面で欧米に遅れを取っている日本、バブル後遺症から立ち直れず巨大な不良債権を抱えている日本、超低金利を維持しなければならない日本――、このような日本は、間違いなく外資に乗っ取られるだろう。
グローバリゼーションというスローガンも、グローバル・スタンダードという価値観も、「フリー・フェアー・グローバル」というビッグバンの三原則も、結局は彼らの基準に他ならない。彼らユダヤ資本は、自分たちの土俵の上に日本を引きずり出して、徹底的にむさぼり尽くすつもりなのである。
1929年の世界大恐慌の後、日本は金融自由化政策をとった。有名な金解禁である。


三井物産をしのぐ貿易商社だった神戸の鈴木商店が倒産し、そこに貸し込んでいた台湾銀行が破綻した。取り付け騒ぎは全国に広がり、休業した中小の銀行は37を数えた。
金解禁の狙いは、金の輸出入を自由にし、金保有量に通貨の発行量をリンクさせる金本位制に復帰させ、経済を安定させることにあった。英米が主導する国際経済秩序と協調しようとする試みでもあった。
これはまさに、日本経済をグローバル・スタンダードに合わせようとする今日の日本版ビッグバンと酷似している。
金解禁をスムーズに進める必要から、経済界の整理と緊縮財政の徹底が図られた。需要抑制によって物価を下げ、輸出を増やして景気浮揚できれば円相場は改善するという理屈だ。しかも背伸びをして、円を過大に評価する旧平価で解禁したのである。
井上はこの措置について、「いっそう不景気になるという説もある」と異論を認めながらも、「苦しい坂を越えることが一番近道であり、一番間違いのない道と思う」と、強い信念で臨んだ。

しかし、井上準之助は「男の本懐」と言って、金解禁を中止しようとはしなかった。日本からどれほど金が流出していこうと、井上は金解禁を中止することはなかったのである。
その結果、日本から流出した金は、月間1億円以上に急増したといわれている。30年1月11日の金解禁開始から31年末までの流出した金は、総額7億円を超え、600トンにも及んだという。
世界が大恐慌に突入しているにもかかわらず、金解禁を断行した井上は、さらに景気を冷やし続けた。このため、日本は緊縮策と世界大恐慌のダブルパンチに見舞われた。世界の大勢が金本位制の放棄に変身していたことを見抜けなかったのである。
井上準之助は、モルガン商会のトーマス・ラモントと非常に親密であった。そして、ラモントから多くのアドバイスを受けていたのである。こう考えると、金解禁というのは、井上が「罠にはめられた」と言えるのかもしれない。
そして1932年2月9日、井上準之助は血盟団の凶弾に倒れるのである。
| 第一次世界大戦景気 | → | バブル景気 |
| バブル崩壊、反動不況 | → | バブル崩壊、平成不況 |
| 関東大震災 | → | 阪神大震災 |
| 鈴木商店・台湾銀行の破綻 | → | 山一証券・北海道拓殖銀行の破綻 |
| ニューヨーク発の世界大恐慌 | → | アジア経済危機(静かなる世界大恐慌) |
| 金解禁 | → | 日本版ビッグバン |
| 浜口雄幸 | → | 橋本龍太郎 |
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金解禁の愚を繰り返すべく、日本版ビッグバンを推し進める榊原英資。彼は井上準之助の轍を踏もうとしている。
榊原英資が、第二の「酒鬼薔薇」にならないことを望む次第である。