渡る世間はサツばかり

第1話 彼の正体

私は教団を脱会した後、東京駅から歩いて5分のところにある住宅会社フランチャイズ本部○●産業に就職した。そこで浄水機部門に配属されたのだが、折りからの不況には勝てず、業績は伸び悩んでいた。

私の上司、O.O氏は年齢52歳。早稲田大学政経学科を卒業。過去、丸紅に勤務し営業畑を歩いてきた人物らしい。彼は非常に交渉力があり、人望も厚い。出来る人と言った印象だ。仕事のためには我が身を犠牲にするタイプで、それがたたったのか、過労と不規則な食事、太りすぎのため、3年前に心臓病の手術をしている。Oさんは何とか浄水機部門を立て直そうと出張続きで奔走し、益々体調を崩しているようだった。

ある日、久しぶりにOさんが出張から戻ってきた。心臓が苦しそうだが会社を休むわけにはいかない。今日は大事な交渉があるのだ。行く途中、△▽クリニックに車を止めた。

「おい、すまないが薬を取ってきてくれんか。今朝、頼んであるから、もう出来ていると思うんだが」

上司の命に従い私は薬を取りに行き、清算を済ませたところで今まで見たことのない言葉を目にした。清算書の保険の種類に「政管」と書いてある。国民健康保険は「国保」、社会保険は「社保」。「政管」とは、一体どういう意味なのだろうか?少なくとも私と同じ保険の種類ならば「社保」となるのである。私は早速この疑問をOさんに投げかけてみた。

「あのう、清算書の保険の種類のところに「政管」とあるんですけど、「政管」って何ですか?」

「おまえ、そんなくだらないこと考えている場合か!これから交渉に行くところなんだぞ。どういう風に話を展開させていくかを考えろ!」

ということで、怒られてしまった。この件については、以後なかなか尋ねる機会がなかったのだが、今から思うと答えるのを避けていたのかもしれない。

それから何日か経ち、午前中の仕事を終えたところでOさんに呼び出されてレストランに行った。

レストランに着くとOさんは愛人と一緒にいた。彼女とはもう何度も会っているので顔なじみだ。T.Sさん、年齢27歳。中央大学法学部を卒業し、現在高島屋に勤務している。彼女と一緒にいるということもあってか、Oさんはとても機嫌がいいようで、昼食にしては高めのメニューをオーダーしている。

一緒に昼食をいただいた後、T.Sさんはちょっと席を外した。その時、なんとなく喉の奥にしまっていた言葉を発してみた。

「Oさん、「政管」って何ですか?」

「…。。。」

「Oさん、「政管」って、病院の清算書に書いてあったでしょう。私、馬鹿だから、知識ないから、教えて欲しいんですよ。そういう種類があるんですね?」

「ある。あるよ。私はね若い頃、日本の要注意人物をアメリカ国防省に連絡する仕事をしていたんだよ。その頃からあの病院にお世話になっていて、未だに保険の種類を書き換えていないんだ。先生がいいよって言うからさ。」

それはおかしい。保険の種類や記号番号が変っていれば、病院は保険請求をすることが出来ない。たとえ変更せずに請求しても、その書類は差し戻されるはずだ。

「政管」というのは、「政府が管理している人間」という意味で、確か、国会議員も「政管」の保険証を持っていたんじゃなかったかな?」

「…だから私はアメリカ国防省の偉い人を知ってるよ。」

と、Oさんは得意げに言った。

私は驚いた。そして次の言葉を言うべきかどうか迷ったが思い切って、

「もしかして、OさんJC★Aじゃないんですか?」

「うわっ!!!」

というとOさんは頭を覆った。

「おまえなんで分かるんだ。」

その後、しばらく彼は声が出なかった。

「いや、でも、でもね、今は違うんだ。今は○●産業の社員だからな。今はしがない中小企業の社員に過ぎないんだよ。」

とは言ったものの、ろれつが回っていない。目が踊っている。

『いや、現役だ。間違いなく現役のJC★Aだ。』と私の感がひらめいた。グルや教団をおとしめたJC★Aが私の目の前にいると思うと、なんとも言えぬ憎しみと、この縁を離すものかという思いが渦巻いていた。

第2話へ続く


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