渡る世間はサツばかり
第9話 怒涛1
久しぶりに
西野さんに会った。彼女は相変わらず元気いっぱいだ。私を元気づけてあげると言って、どんどんメニューやお酒を注文していく。こうしていると、何もかも忘れていく。嫌なことも、何もかも。
だいぶ彼女は酔ってきた。私もお腹いっぱいだ。
「あのさ、よそうと思ったんだけどさ、言うわ。電話で、あんたの話聞いた時、これはもうずっとあたしの心にしまっとこうと思ったんだけどさ。
この間、あたしのところに
警察が来たのよ。」一気に酔いが覚めていく。
「それでね、何と私の
職場に来ちゃったわけ。アポなしでいきなりよ。で、10分でいいから話し聞かせろって言うのよ。」「
警察だって言って尋ねてきたの?」「いや、個人名。
それでさ、用件は何?って言ったらあんたの事だっていうじゃない?あたしびっくりしてさぁ〜、話聞いてやったわよ。
そしたら、あんたんとこのマンション、世話したの私ジャン。
どうして世話したのだって。言ってやったわよぉ〜!住むとこなくて困ってるからだって。あとさぁ、あたしとあんたの関係は何だ、あんたはどこに勤めてんだって、色々聞いてくるから、頭にきちゃってさぁ〜、彼女は脱会してんだから、もうあそことは関係ないんだから、あんたにそんな事聞かれる筋合いはないって怒鳴ってやったわ。」彼女は酔いも手伝ってか、いつもより饒舌だ。
「それ、会社の応接室で話したの?」
「ばかねぇ〜そんな事できるわけないジャン。
警察の車の中よ。で、さっさと出てきたわ。何が10分よ。30分も話してたのよ。それで最後になんて言ったと思う?この事はあんたに絶対言わないでくれって!だったら最初から来るなよ。いい迷惑だわ。」「ごめんなさい。私のせいだわ。」
「違うわよ。あぁ〜ゴメン。やっぱり言わなきゃよかったなぁ〜」
「そんな事ない。隠されている方がもっと辛い。でも大丈夫。全然関係ないし、まだ逃げてる人がいるから、
警察も必死なのよ。」「それにしてもねぇ〜。私のこと知ってるって事は多分、
不動産屋に行って契約内容を調べたんだわきっと。そう思ってね、すぐにオーナーの先生(税理士)のところに電話したのよ。そしたら案の定、
来たんだって! でもね、その時めっちゃ忙しくて、後にしてって、帰ってもらったんだって。それからまだ来てないって言うから、ちゃんと言っといたわよ。あなたは脱会してる。もう関係ないって。先生もね、全然心配してなかったから安心して。絶対追い出されるようなことはないわ。」
それからまもなく私たちは別れた。いつのまにか、夜は秋風が吹くような季節になっている。
自宅に戻った私は倒れ込んでしまった。力が入らない。
『西野さんや先生にまで迷惑が、、、』と思うと自分の知らないところにまで、捜査の手が及んでいることを考えた。と同時に迷惑をかけている方々に、大変申し訳ない気分でいっぱいになった。目が涙でいっぱいになってくる。『私はそんなに悪いことをしたんだろうか?何がどう悪いの?ヨシコさんが逮捕されたのは、旅行の一件でしょう?旅行にも行ってない、彼女自身にすらろくろく会ったことのない私が、なんでこんなに追われるの?一体容疑は何?何が知りたいの?知りたかったら、直接聞きにくればいいじゃないの?いくらでも教えてやるわ。』
留守電が何件か入っている。聞いてみるとメッセージがない。ボーッとしていると電話が鳴った。
「おう、今帰ってきたのか。」
Oさん
の声だった。「友人と会っておりまして。。。」
「あのさ、近くの公衆電話から、今すぐ携帯に電話してくれ。」
といって、切れた。面倒だなと思いながらふらふらとコンビニに行き、
Oさんに電話する。「悪いな。何回も電話していたのは俺だ。メッセージ入れられなくてすまん。いいか、これから言うことにはな、ハイハイって返事だけしろ。
おまえの電話、盗聴されてる。
」「えっ!!!」
「ハイって言うんだ!誰か見ているかもしれないんだぞ!
俺の自宅の電話もそうだ、やられてる。
知らせが入ったんだ。それで、おまえのところはどうかと聞いてみたら、そうだっていうんでな。でも、携帯は盗聴されないポイントがあるから、今そこで話してる。あのな、仕事の件はいいがそれ以外で何かあったら、携帯の留守電メッセージに電話くださいとだけ言え。後でこちらから連絡する。
それから、俺は尾行されてる。今も外に車が止まっていて、監視されている。…あれは警察じゃないな。公安だ。公安が動いてる。俺はぴったりマークされている。
こんな状態だからって事もないんだが、さっき、社長に電話して、明日から延び延びになっていた新潟支店への出張、認めてもらったから。だからしばらく留守にする。とにかく、俺のことは心配するな。大丈夫だ。俺のことがはっきりすれば、おまえの尾行とか、盗聴とか、解けるはずだからな。じゃ、頼んだぞ。」
「…ハイ」
声を出す力さえなくなっていく。
『
Oさんは自分にかけられた容疑で、私が尾行されたり、盗聴されたりしていると信じている。。。』第10話へ続く